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コラムcolumn

2007年4月:日本医事新報コラムより抜粋

「外科医」として「NST」医師として vol.1 

 NST(Nutrition Support Team) の必要性が叫ばれて久しい。私も大学病院でチーフレジデントを終了した後、出向した民間病院でNST を立ち上げた。はじめは外科回診という形式をとり、担当患者さんを中心に栄養状態を把握し、病棟ナースや管理栄養士などと一緒に必要栄養量を計算し、投与計画を立てた。最初に担当した患者さんは、胃癌術後で腸閉塞となった、77 歳の高齢患者さんだった。前任医師が緊急手術を施行し、手術は成功したが、その後肺炎を併発し、1ヶ月の長期にわたり人工呼吸器管理を余儀なくされていた。私たちはそこから1ヶ月かけて、その患者さんに栄養療法を施し、最終的には自立歩行にて外来通院が可能となるまで回復させることができた。これを機に、私はNST 活動を院内業務として正式に認めてもらえるよう、病院長に提案した。これにより当院をNST 稼動認定施設として、日本静脈経腸栄養学会に申請することができた。今までの活動内容をまとめ、院内規約を作成し、必要書類を書き上げて申請書類を提出するまでに、活動をはじめてから3 ヶ月と要さなかった。時に他医院の先生から「他科の先生がNST をなかなか理解してくれないで困っている」と耳にすることがあるが、当院でもその状況は同じであった。しかし私たちはNST 回診や院内勉強会、そして病院長への申請と、活動を先行させ、業績を示し、学会認定を取得した。今では外科入院の担当患者さんより、むしろ他科入院の患者さんの栄養治療を担当することが多くなってきた。食事内容の変更や採血オーダーの提出のみならず、点滴や内服薬を指示し、内視鏡検査まで施行することもある。信頼されている分の責任を常に感じながら、毎回のNST 回診に立ち向かっている。

「外科医」として「NST」医師として vol.2

 実をいうと私から「NST をやりたい」と言ったことは一度もない。その始まりは完全な人任せで、たまたま大学病院勤務時代に教授から「うちでもはじめるから、お前も取れ。」といわれて講習会を受講したにすぎない。はじめは何が何だか分からなかった。もちろんこれに大学病院内で指導者はいなかった。我々の研修医時代は、点滴指示は「見て盗むもの」で、教えてくれる人はいなかったし、先輩の指示書を見てまねしていた。しかし経験上、この方法では患者さんが改善しないことがあることを自覚していた。限界を感じた私は、栄養療法に関する本を購入し、独学で勉強した。学年が進んで、自分の判断で点滴指示が出せるようになってからも、納得のいく指示を出せずにいた。患者さんは快方へ向かう方が多いのだが、特に重症患者さんの回復過程で、さまざまな合併症が発症することがある。常に疑問が残った。そんな時にNST の講習会を受けるように教授からいわれ、これは運命と思い積極的に講義に参加した。その後は点滴指示に私なりのこだわりをもって投与をおこなっていたが、手術に明け暮れる大学病院勤務では、実際にNST を立ち上げることはできなかった。本格的に活動ができたのは民間病院に勤務してからであった。今では入院患者さんが手術をして回復していく過程より、手術をせずに良くなっていく過程を診ることに取り付かれている気がする。

「外科医」として「NST」医師として vol.3

院内でのNST 活動が安定したころで、日本静脈経腸栄養学会のNST 稼動認定施設に申請するとき、私はふと気づいたことがあった。それは同じ埼玉県川越市内にNST 稼動認定施設が3つあることである。さらに一方のNST 担当医は私の大学時代の同期で、もう一方のNST 担当医はその同期の医局の先輩であった。そこで私は二人の担当者に会いに行った。するとそれぞれが困難な症例に手を焼いていたり、他科からコンサルタントされた患者さんの指示出しで悩んでいたり、他病院への紹介がスムースに行かなかったりと、さまざまな問題を抱えていた。そこで私たちは、病院間の垣根を越えてともに症例を検討する、3 病院合同の勉強会を立ち上げた。3 人が顔見知りであったため、話が出てから2ヶ月足らずで最初の会を設けることができた。本会は病診連携にも力を入れたことで、さまざまな職種の医療関係者さんの参加を頂いている。また最近では川越市外からの検討症例の提示もあり、毎回2 時間を超える大討論会となっている。今年3 月には第5 回の勉強会を記念して特別講演会を開催し、本会の新たな1 ページを開くことができた。現在、われわれは勉強会参加施設を中心に、統一したNST サマリーの作成に取り組んでいる。院内から発足したNST が、地域医療と病診連携を合い言葉にして、院外へとその活動を広げている。その中心となって活躍なさっているのは我々医師ではなく、管理栄養士さんだ。発足してまだ1 年に満たない本会が、地域に密着し、より多くの医療関係者、患者さんに役立つものに発展したことはとても嬉しく思う。

「外科医」として「NST」医師として vol.4

私自身、NST 活動を開始してまだ1 年半にすぎない。一見順調に患者さんを回復させているようにも思えるが、1 症例、1 症例、経験を重ねるにつれ、以前に治療をおこなった患者さんに対して、「こうした方がより良かったのではないか?」「こんな方法もあったのだ。」と、研鑚を積む毎日だ。 どんな治療も絶対ということはない。NST も同様である。主病変を理解し、治療をおこなう。補正が必要なものは補正する。栄養状態の把握を基礎とし、治療の相乗効果をはかる。栄養状態を改善した患者さんの回復速度は、明らかに早い。しかしそれだけに固着してしまうと、主病変を敏感に判断することができなくなることもある。  大学病院で手術ばかりして「外科医」として働いていたころは、栄養治療が自分の仕事だとは考えも しなかった。しかし民間病院へ出て、「お医者さん」としてこの仕事に関わってみると、自分が患者さん にしてあげられることは、こんなにもたくさんあるのだと実感することができた。しかもそれは患者さんだけでなく家族の方々も、求めているものであった。私はNST を開始したことで、患者さんの傍らで治療をおこなえる喜びと、地域医療に従事出来る感謝の気持ちを持つことができた。そしてそれを支 えてくれる医療スタッフや、同期や先輩などNST を担うたくさんの仲間に出会うこともできた。今、 私は全ての職種が治療計画に参加することで、総合的に疾患を診ることができる、患者さんを中心としたチーム医療を目指して、修行の毎日である。

おわり
 
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